零の狼-新撰組零番隊-
あまりにも唐突に。

男は降参の意思を私に告げた。

しかし遅い。

私はもう既にとどめの太刀を振るった後。

何より死合を仕掛けておいて、敗北を目の前にした途端に降参などと虫のいい。

斬り合いを愚弄するのか。

その甘ったれた心構えもまとめて、この場で斬り伏せる…!

躊躇う事なく、私は小太刀の切っ先を男に突き立てようとして。

「待てって」

人斬り包丁によって、その切っ先を遮られた。

「……!」

その捌きに目を丸くする。

降参をしておきながら、私の刺突をたやすく捌くだと?

それだけの腕を持っておきながら、敗北を認めたというのか、この男は…?

< 31 / 112 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop