零の狼-新撰組零番隊-
「俺ぁ降参だって言っただろ?戦う意思のない者まで斬り捨てるのが、新撰組零番隊のやり方かい?」

「……」

不服をあからさまに顔に出し、私は男を見据えた。

そんな視線での抗議もどこ吹く風。

男は無防備に、私に背中を向けた。

私に敵意はないと考えたのか、それとも私が斬り込んでも捌ける自信があるのか。

とにかくがら空きの背中を向けたまま、境内を歩き、そばの樹木の枝に手を伸ばす。

…枝には羽織がかけてあった。

浅葱色に段だら模様の羽織。

「…!…貴方は新撰組の隊士ですか?」

思わず口に出す。

振り向いた男は、ニッと笑った。

「新撰組零番隊新入隊士、一七夜月小次郎(かのうこじろう)だ」

< 32 / 112 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop