零の狼-新撰組零番隊-
一七夜月小次郎。

そうだ。

そういえば人斬り包丁の侠客が、確かそんな名前であった。

しかし、その一七夜月小次郎が新撰組零番隊の新入隊士だったとは。

「大体…何故すぐに…新入隊士である事を…名乗らないんですか…」

たどたどしく、抑揚のない声で一七夜月小次郎に抗議する。

危うく同志を小太刀の錆にしてしまう所だったのだ。

「俺が仲間だと知ったら、あんたは本気で仕合っちゃくれないだろう?」

「……!」

ただの腕比べの為に、こんな真似をしたのか。

どこまでも理解に苦しむ。

憂国の士である新撰組零番隊隊士の思想としては、軽薄すぎる気がした。

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