零の狼-新撰組零番隊-
知らず、拳を握り締めていた。

俯き加減。

無表情はいつもの事だが、その眉尻が微かに動く。

…そんな私の僅かな表情の変化を、六郎面さんは見逃さない。

「いつも無口無表情の春夏秋冬も、ポーカーフェイスは保っていられねえか。当然だ。威震志士は、お前から感情を奪った元凶だものな」

「……?」

六郎面さんの言葉に、一七夜月さんが何の事やらわからない、といった風に私を見た。

「……」

私は喋らない。

喋りたくない。

「なに、よくある話だ」

代わりに六郎面さんが言った。

「春夏秋冬はガキの折に威震志士の起こした無差別殺傷事件で両親を殺されている。目の前でな…その時のショックで表情も言葉も失った」

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