零の狼-新撰組零番隊-
影を帯びた、しかし生気に満ちた眼で、躑躅森組長は私を見据える。

「春夏秋冬、己の信念に迷うな」

彼は言う。

「幕末…初代新撰組もまた、己の信念に躊躇わず、省みず、迷う事なく戦い抜いた。結果として官軍に押され、隊そのものが存続する事ができず、末期には土方副長たった一人になったとしても、最期までその信念が揺らぐ事はなかった」

独房の片隅に蹲る私。

そんな私の目の前に、躑躅森組長は片膝をつく。

「士道、武士道とは、己の信念に迷いを持たず、邁進する事。たとえその果てに敗北や死が待っていようとも、己の信じた道を疑わず突き進む事。己の信念が曲がっていないと思ったのならば、歩む道も曲げてはならん。それが士道であり、武士道だ」

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