混沌のグリモワール~白銀の探求者~
 第七執行部隊がヘリに乗り込んでから数分後、ヘリ操縦士であるキール・マイスター二士が到着を告げる。

 場所はアウロラ近辺の広野上空。
 敵が大型の魔法生物となると、撃墜の危険を伴う為ヘリでの降下はできない。
 第七執行部隊の隊員達は、遙か上空に留まるヘリから勢いよく飛び出した。

 生身で降下する四人を包むのは桃色の魔力光。
 リリィのアビリティスペル『フェアリーウィンド』

 対象者に浮遊効果を与える中級アビリティスペル。
 一度に四人分の中級スペルを発動するのは簡単なことではない。リリィ・アリスンは多数のSIRENメンバーの中でも補助魔法にかけてはトップレベルの実力を持つ魔術師だ。

 浮遊効果が付加された四人は降下の勢いを完全に抑え、ゆっくりと広野に降り立つ。
 降下地点から前方約二十メートル地点に見えるのは、亀のような姿をした危険度Bランク指定の魔法生物、『アダマンタイタス』

 凶悪な魔法生物や魔法犯罪者にはSIREN本部がEからSSS(トリプルエス)までの危険度ランクを設定し、基本的にC以上の魔法生物は執行部隊の担当となる。
 ちなみにSS(ダブルエス)以上の魔法生物は今のところ発見されていない。

「アダマンタイタスか。これなら隊長が出るまでもないですね」

 全長十メートルはあろうかという巨大な魔法生物を目の前にしても、気負いした様子はないフリッツ。
 もちろんそれは他のメンバーも同じ。

「油断は禁物。いつも通り、フリッツとコーラルは接近戦で敵を撹乱。隙が出来たら俺とリリィの魔法で殲滅する」

 表情を崩さず、冷静に作戦を伝えるグレアム。それに対して意義を申し立てることもなく「はい!」と声を揃える隊員達。

 足並みを揃えて駆け出すフリッツとコーラル。
 今、第七執行部隊の戦いが始まる。
< 11 / 37 >

この作品をシェア

pagetop