混沌のグリモワール~白銀の探求者~
 アダマンタイタスとの距離約十メートル。コーラルはブレイズレギンスを発動し、アダマンタイタスとの距離を一気に詰める。
 接近するコーラルに気づいたアダマンタイタスは直径一メートル以上もある左足をコーラルに向けて突き出す。

 決して攻撃速度が速い訳ではない。その質量ゆえに巻き起こる暴風。
 コーラルはブレイズレギンスの爆風を利用してそれを回避。
 ただ足を突き出しただけ……しかし、当たればただでは済まない威力。人間とは違う、圧倒的な質量の差。

 コーラルは回避後すぐさま体制を立て直し、アダマンタイタスの腹部、つまり真下に潜り込む。
 背中の甲羅は鋼クラスの硬度を誇っているため、打撃や斬撃はほとんど効果がないが、甲羅に覆われていない腹部なら十分刃が通る。

 コーラルは腰の回転を利用してイクシードを真上に振り上げる……が、それは鈍い音を残して大きく弾かれた。

『魔力壁を感知。魔力濃度A』

 イクシードから発せられる言葉。
 魔力壁……それは魔法生物が持っている魔力の鎧。Aクラスともなると、打撃や斬撃はもちろん中級までの攻撃魔法は完全に打ち消すことができる。
 コーラルはイクシードの言葉から斬撃が効かないと判断すると、一旦アダマンタイタスから距離を取った。

「なぁイクシード、アダマンタイタスの魔力壁は確かCクラスじゃなかったか?」

『イエス。稀にBクラスの魔力壁を持つ個体も存在しますが、Aクラスは前例がありません』

 コーラルは指示を仰ぐべきだと判断し、イクシードの解析結果をグレアムに伝える。
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