混沌のグリモワール~白銀の探求者~
グレアムの部屋があるマンションの前まで来た時、後ろを歩いていたコーラルが立ち止まって口を開いた。
「グレアム兄さん……」
勤務時は『隊長』もしくは『ライオネル一佐』と呼んでいるが、プライベートではこの呼び名。
九年前に両親と兄を失ったコーラルに対して『これからは自分を兄と思え』と言ってから、コーラルはずっとそう呼んでいる。
もちろん戸籍上はなんの繋がりもないが、二人の間にはきっとそんなものは必要ないのだろう。
コーラルの呼びかけに対して、前を歩いていたグレアムも立ち止まって振り返る。
「どうした?」
「今日の任務のことなんだけど……」
「そのことか」
グレアムは一言でコーラルが言わんとしていることに察しがついた。
今日の任務……コーラルの頭に残っているのは本来有り得ないレベルの魔力壁を展開したアダマンタイタスのこと。
それを破壊したのはコーラルで、計測したのはコーラルの愛剣イクシード。
それが有り得ない事象だということは対峙したメンバーの中でもコーラルが一番理解していると言っても過言ではない。
そして、グレアム同様コーラルにも今回の有り得ない事象に対して心当たりがあった。
「まさかアレが関係してるんじゃ……ないよね?」
「それについては管理部が捜査員を派遣してくれている。今のところはなんとも言えん」
しかし――と続けるグレアム。
「アレが関係している可能性は高い」
その瞬間、コーラルの表情が明らかに変わった。
それの瞳に宿すのは怒り。憎しみ。
それはまさに『復讐者』の瞳。
それと同時に、コーラルは僅かな笑みを見せる。
グレアムはそんなコーラルに危うさを覚えずにはいられなかった。
「グレアム兄さん……」
勤務時は『隊長』もしくは『ライオネル一佐』と呼んでいるが、プライベートではこの呼び名。
九年前に両親と兄を失ったコーラルに対して『これからは自分を兄と思え』と言ってから、コーラルはずっとそう呼んでいる。
もちろん戸籍上はなんの繋がりもないが、二人の間にはきっとそんなものは必要ないのだろう。
コーラルの呼びかけに対して、前を歩いていたグレアムも立ち止まって振り返る。
「どうした?」
「今日の任務のことなんだけど……」
「そのことか」
グレアムは一言でコーラルが言わんとしていることに察しがついた。
今日の任務……コーラルの頭に残っているのは本来有り得ないレベルの魔力壁を展開したアダマンタイタスのこと。
それを破壊したのはコーラルで、計測したのはコーラルの愛剣イクシード。
それが有り得ない事象だということは対峙したメンバーの中でもコーラルが一番理解していると言っても過言ではない。
そして、グレアム同様コーラルにも今回の有り得ない事象に対して心当たりがあった。
「まさかアレが関係してるんじゃ……ないよね?」
「それについては管理部が捜査員を派遣してくれている。今のところはなんとも言えん」
しかし――と続けるグレアム。
「アレが関係している可能性は高い」
その瞬間、コーラルの表情が明らかに変わった。
それの瞳に宿すのは怒り。憎しみ。
それはまさに『復讐者』の瞳。
それと同時に、コーラルは僅かな笑みを見せる。
グレアムはそんなコーラルに危うさを覚えずにはいられなかった。