混沌のグリモワール~白銀の探求者~
 グレアム・ライオネルが管理部から戻ってきた時には、コーラル、フリッツ両名とも肉体面、精神面共にボロボロになっていた。

「またか……リリィ、ほどほどにしておけ」

「あ、隊長! おかえりなさい」

 グレアムの姿を見るや、お説教モードを解除してすぐさま駆け寄るリリィ。

 助かった……と、大きく息を吐くコーラルとフリッツ。

 コーラルと同じように、リリィもグレアムに多大な恩があるらしいのだが、それがどういったものなのかはコーラルもフリッツも知らない。

「コーラル、フリッツ、出撃の準備をしろ」

「…………はい?」

 コーラルとフリッツの返事が見事に重なる。

 二人共自分の耳を疑った。
 訓練によってボロボロの状態。その上お昼時ということもあってかなりの空腹。

 ようやっと休憩って時に、出撃準備? 有り得ない。

「えっと……冗談ですよね?」

 恐る恐るといった感じでフリッツが問う。

「こんな冗談を言ってなんの利点がある? ユークリッドから一キロほどのところにある村が犯罪者集団に襲われているらしい。至急村人の救助と犯罪者達の確保に迎えとのことだ」

 つまり、グレアムが管理部に呼び出されたのは新たな任務を伝える為だったのだ。

 フリッツとコーラルはもう一度、今度は大きな溜め息を吐く。

 そして、二人とも表情を引き締めた。

「もう一頑張りいきますか!」

 気合いを入れ直すフリッツ。

「助けを求めてる人達がいるんだ。見過ごせないね」

『それでこそマイマスターです』

 立ち上がるコーラル。そのそばにはまだ武器庫に返却していなかったイクシードの姿。

「こうしている間にも被害は大きくなる。直ちに出撃するぞ」

「了解!」

 グレアムの言葉に、一同は声を揃えた。
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