混沌のグリモワール~白銀の探求者~
数分後、ユークリッドから約一キロのところにある村、ベルサスの上空。
キールが操縦士を勤めるヘリに乗り込んだ第七執行部隊一同は降下の準備に入っていた。
「管理部からの情報では確保対象は少なくとも十人以上。一つに固まっていたら逃げられる可能性がある。それぞれ降下ポイントをズラして村人の救助と対象の確保に当たる」
「了解!」
ヘリ内部にて全員にフェアリーウィンドをかけるリリィ。
それを確認すると、まずはグレアムが先頭を切ってヘリから飛び降りた。
それから少し位置をズラしてリリィ、フリッツと続く。
そして最後はコーラル。
「行くよ、イクシード」
『イエス、マイマスター』
勢いよく飛び降りるコーラル。
降下のスピードはフェアリーウィンドの効果によって段々と減少していき、ゆっくりと村のはずれに降り立った。
――――――
村のはずれに存在する林の中、木の実が詰まったかごを片手にぶら下げて、少女は疾走していた。
いつも通り、料理に使う木の実を採取する為に林に入った。
けれど、そんないつも通りの日常も、突如村を襲撃した悪人達によって一変してしまう。
「はぁ……はぁ……」
少女は走る足を緩めない。なぜなら、少女のすぐ後ろを二人の男が追いかけて来ているから。
いくら地の理があるとはいえ相手は男。自分は女。手を抜けば直ぐに追いつかれる。
とはいえ、なかなか追いつけない状況に追跡者達も苛立ちを隠せなくなっていた。
「ちょこまかとすばしっこい。おい、魔法で足止めしろ」
「わかった。フレイムボール!」
炎熱系の初級魔法、『フレイムボール』
追跡者の一人が右手に集めた魔力炎が収束し、球体に変化。
手のひらから放たれたそれは少女の右足をかすった。