混沌のグリモワール~白銀の探求者~
 翌朝、コーラルは朝食を頬張りながら昨夜のことを考える。

(魔力値Sランクって言ったら、グレアム兄さんと同レベルってことじゃないか)

 Sランク以上の魔術師はSIREN全メンバーを集めても数えるほどしか存在しない。
 若きエースと呼ばれるコーラルでさえ魔力値はAA(ダブルエー)ランク。

 もちろん魔力値だけが実力を決めるわけではない。
 魔力のコントロール技術や身体能力など、力の優劣を決める要素はそれこそ上げればキリがないほど存在する。

 だが、その他の要素とは違い、魔力値は先天的なものによる影響が大きい。
 努力で増加させることが難しく、Sランクともなると努力での到達は不可能に近い。

 つまり、すでに体内に多量の魔力を抱えているあの少女は、魔術師として多大な素質を持っていることになる。

「コーラル、あまり食が進んでいないみたいだが、どこか具合でも悪いのか?」

「あ、いや、そんなことないよ」

 疑惑の表情を見せるグレアム。

 どうやら思考するあまり食べるのを忘れてしまっていたようだ。

 コーラルは心配させないようにと自分の分の食事を一気に平らげた。

 事情聴取で聞き出した情報によると、悪人達は一人の男に依頼されて少女を狙っていたらしい。

 依頼主の目的は少女の魔力? それともなにか別の……

(考える度にわからなくなってくる。俺にはこういうことは向いてないのかもな)

 自分を御主人様と呼ぶ純白の少女。

 これから先また狙われることがあっても、必ず自分が守ると、コーラルはそう心に決めた。
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