混沌のグリモワール~白銀の探求者~
ちなみに……とグレアム。
「彼女の魔力値はSランク、年齢は15、階級は二曹だ」
「Sランクって……すっごーい!」
「俺より階級上……」
ソフィの魔力値に感嘆の表情を見せるリリィと、新米のソフィより自分の方が階級が下なことに落胆するフリッツ。
「それと、本人の強い希望でな、彼女の魔術指導はコーラルに担当してもらう」
「え? 俺……ですか」
「そうだ。人に教えるのもいい勉強になる。お前にとってもメリットはあるはずだ」
はぁ……と曖昧に頷くコーラル。
コーラルに過剰なまでに懐いてしまっている以上、コーラルが指導することはソフィの精神面ではかなりプラスになることだろう。
ただ、一つ大きな問題がある。
「俺、遠距離魔法はほとんど使えないんですけど」
そう、接近戦のスペシャリストと言えば聞こえはいいが、悪く言ってしまえば不器用なのだ。
近距離戦闘用のアビリティスペルを大の得意とする反面、遠距離戦闘用のバスタースペルやシュートスペル(射撃魔法)の才能がまったくと言っていいほどにない。
目の前の細身の少女はどう見ても近距離戦闘型には見えない。
「その心配はいらない。検査の結果、彼女はすべての魔法への適性を持っているらしいからどの道近距離戦闘訓練は必要になる。それに……」
そう言ってグレアムは自分の背に隠していた剣……イクシードを取り出す。
「コーラルの教導補佐としてイクシードをつけることにした。これからはイクシードを武器庫に戻す必要はないぞ」
『一緒に頑張りましょうね、マイマスター』
そうしてコーラルの手元に渡るイクシード。
これからはこの友人と片時も離れず共にいることができる。
それはコーラルにとって思わず涙が出てしまうほどに嬉しいことだった。