混沌のグリモワール~白銀の探求者~
 それからしばらくして、午前の訓練が終了。
 第七執行部隊の面々は昼食を取る為に食堂に集まっていた。

 当然のようにコーラルの隣を陣取るソフィ。

「御主人様は何にするですか? ボクがとってきます」

「いや、自分の分は自分で取りに行くよ」

「ダメです! 御主人様はボクの御主人様なんですから!」

 あはは……と冷や汗を流すコーラル。

 年下の美少女に尽くしてもらう。端から見ればかなり羨ましい状況なのだが、恋愛などの経験がないコーラルにとってソフィの行動は頭痛の種でしかないようだ。

 結局コーラルが折れ、ソフィは二人分の食券を買いに行ってしまった。

「なぁコーラル、実際のとこソフィちゃんとはどんな関係なんだよ」

 前方に座るコーラルを睨みながら問いかけるフリッツ。

「追われていたところを助けた」

「それはわかってるっての。でもそれだけでお前のことを『御主人様』なんて呼ぶようになるかぁ? 昔どこかで会ったことがあるとか、なんかねぇの?」

「……まったく記憶にない」

 フリッツの言う通り、考えてみればおかしな話だ。

 いくら助けてもらった恩があるとはいえ、彼女の行動は恩返しと言うよりは奉仕に近い。

 恩人に対して『御主人様』なんて敬称を使う文化……という線もないだろう。

 今度機会があったら一度話をしてみよう。そう決めたコーラルだった。
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