【愛祐実×詩音】スキをちょうだい~虹那編~
現れたな、イライラの張本人!!
昨日のことなんて何もなかったように、いつもと変わらずヘラヘラした楓が立っていた。
「よ!今日も派手にやったらしいね~亜依チャン♪」
“派手にやった”というのは、今朝、亜依が颯太にデートの誘いをして見事に撃沈したことを言っている。
「楓くんこそ。どうなの?噂のカノジョとは」
珍しく亜依が楓に鋭いツッコミを入れて、あたしは心の中で亜依に拍手を贈った。
「あ~噂?誰の事?」
相変わらずハッキリしない楓に、ますますイライラが募る。
こいつ、マジムカつく!!
「噂って言ったらあの子しかいないでしょ!?昨日だって腕組んでラブラブだったじゃない!!いい加減認めれば?」
怒り任せに言葉を並べた。
事情を知る亜依だけが、あたしと楓の顔を見比べながら顔を青くしている。
でもごめん、亜依。
あたしは今ここで引き下がるわけにはいかないの!!
キッと楓を睨みつけると、負けじと楓が見返してきた。
「だから、一体誰のこと言ってんだよ!?」
いつも以上に険悪なムードが漂いそうになった時、泣いている亜依が視界に入ってギョッとする。
「あ、亜依!?」
そこからあたしと楓の喧嘩は一時中断。
2人して亜依のなだめ役に徹する。
こういう時だけは、あたしと楓の連携プレーはすごい。
すると、しばらく考え込んでいた楓が、突然パチンと指を鳴らして目を輝かせた。
「オレさー、すっげーいいこと思いついたんだけど!!」
楓のいいことなんて、きっとろくなことじゃない。
「いいことって何よ?」
「実はさー。オレ、1回でいいから行ってみたかったんだよね~」