Dear

第２章 転入

―１ヶ月前
「吉田カナです。よろしくお願いします。」

あたしは元気よくそういった。
もともと明るい性格ではない。
でも、母が
「カナは感じがわるくみえるから新しい学校では明るくするのよ。」
―なによ。あなたたちの都合であたしは転校したんじゃない。
だから、あたしは親がきらいだ。父親は本当の父親じゃない。母の再婚相手。家もきらい。

「吉田さん！」
せきがとなりの…
あたしは人の名前を覚えるのが苦手だ。
「ウチ、岩本ユキ！よろしく。」

彼女は高いこえでこういった。
セミロングの黒髪にピンクのピンで前髪をとめている。
すこし日に焼けた肌。
膝上のスカート。
どこにでもいそうなクラスのムードメーカー的な人だった。

「うん、よろしくね。」
あたしはなるべく明るく返事をした。

「カナってよんでいい?ウチのことはユキでいいからさ！」

「うん。いいよ。」

「やったぁー！じゃあこれからはウチら友達だね！よろしくね！カナ。」
「よろしく。ユキ。」

こうしてあたしはユキと友達になった。


―３日後

転入してきてから１週間がすぎた。

ユキのおかげで友達はだいぶ増えた。

そして、あいつと出会った。

ある日、朝遅刻してきた男子がいた。
あたしはこう見えて遅刻は許せない。

休み時間。その男子と目があった。えっ?だんだん向こうから近づいてくる。

「はじめまして！この前転入してきた吉田さんだよね?」

「俺、萩原ユウヤ！よろしく。」
軽そうな男…
少し長い髪。
着くずした制服。
ゆるくしめられたネクタイ。
チャラ男。

「よろしく。」

ふーん。萩原ユウヤね。まっ、また覚えられないんだろーけど。

こうして、ユウヤの第一印象は最悪だった。


「カナー！あそぼー！」
いつもの高いこえで、ユキが呼ぶ。

「あっ、うん。」

あたしは返事をし、校庭へ走る。

初夏の風が気持ち良かった。

ユウヤと出会った時は初夏だったんだ。