【詩音×愛祐実】スキをちょうだい~亜依編~
後ろを振り返るとそこにいたのは噂のオトコ
楓くんがニヤニヤしながら立っていた。
「よ!今日も派手にやったらしいね~亜依チャン♪」
派手にって・・いつもの事だと思うんだけど。
楓くんは誰に対しても優しくて、
誰からも好かれる男の子。
壁を作ったりしないからもちろん女の子とも仲良しなわけで・・。
「楓くんこそ。どうなの?噂のカノジョとは」
「あ~噂?誰の事?」
あたしの言ってる事が分からないのか、
それともわざと話をそらしているのか。
楓くんはただ適当そうな口調で答えるだけ。
「噂って言ったらあの子しかいないじゃない!
それとも付き合ってる事を言うのが恥ずかしいの?」
や・・やばい・・
この展開は非常にやばいって・・
さっきので火がついちゃったせいで
虹那ちゃんの機嫌はすこぶる悪いし。
それに
「だから誰の事だって!?」
何故かは分からないけど楓くんもムキになってる。
でも
そんな二人が少し羨ましかったりする。
「ちょ、亜依?どうしたの?」
「亜依チャン!?」
二人が何で驚いた顔をしているのか理解できなかったけど。
でもその原因がすぐに分かった。
「亜依、あんた」
視界がぼやける。
こんなつもりなんてなかったのに。
泣く事なんかないのに。
「ごめん、何か目にゴミが入っちゃったみたいで」
ジメジメさせてしまったこの空気を何とかしたくて
無理して笑顔を作るけど。
「いいんだよ、無理しなくて」
「そーそー。今は颯太のヤツいないし」
二人の優しいなだめる声につられて
次から次へと零れる涙。
誰もあたしが泣いてるのに気が付かないのは
座っている席が後ろだから。
ここの席でよかったって今
心から席替えの神様に感謝してる。
「オレさ~いい事思いついたんだけど・・」
パチンと指を鳴らしてニヤニヤ笑う楓くん。
「いい事って何よ」
「実はさ~」