【短編】キミと、あたし。
「あは…何だか、巣立つ息子を見送る母親の気持ちになっちゃって、つい」
「何だソレ」
そしてまたあの笑顔を見せてくれるんだ。
あたしだけに見せてくれるのは
今日で最後なんだね。
「ほら…ッ!言うなら早くしないと!他の子に取られちゃうんだからね」
水分を全然吸ってくれない新品のセーターで顔を拭う。
「でもまだ心の準備が…」
「そんなもの、呼び出しに行く間にしなよ!
それにもうすぐ店番やってるアミの休憩あるみたいだから。
先越される前に約束取り付けてきなッ」
でも
とまだ渋る彼の背中を押し、教室から出す。
「頑張ってよ!ね?」
「……おう!」
少しだけ速足で去っていく彼を見送る。
刹那、
止まっていたはずの涙があふれ返ってきた。