【短編】キミと、あたし。
「何呆けてんだ?」
昔の事を思い出していたあたしに、明るい声がかかる。
「春基。…色々思い出してたからさ」
「…ふーん」
あの時のように、あたしの前の席に腰かける春基。
あたしは視線を下に向け、書き途中だった日誌を開いて
ざらざらした紙にペンを走らせる。
「言わなくていいのか?」
一時間目の授業を書きいれていたのに、余りにも唐突な質問に手が止まった。
「…何が」
彼は伸びた前髪を弄びながら、まだ教室に残っていたテツ達を顎でしゃくる。
「…言ってどうするの。
わざわざ二人の幸せを壊したくない。
それに振られるのは目に見えてる」
仲よさげに、一つのマフラーを互いの首に巻きつけてじゃれあってる二人。
以前ほどではないけれど
やっぱり胸がざわついた。