【短編】キミと、あたし。
彼女の足音が遠ざかってから
「マフィンって?」
まだ頬に熱を残したままの彼が口を開いた。
「…家庭科部なの」
お菓子を作ったり、編み物したり
少しでも女の子らしくなりたくて入部した。
クラスが分かれてしまったから、少しでも一緒に居れるようにとアミも家庭科部に入ってくれた。
もう既に女の子らしいというのに。
料理も出来て、可愛いしぐさも、ふわふわな髪も、はにかんだ時にできるえくぼも
あたしに無いものをみんな持っているというのに…
嫉妬なんて馬鹿げてるけど、時々どうしようもなく彼女を羨ましく感じてしまう。
親友なのに。
…いや、親友だからこそ。
一番近くに居るからこそ、自分と比べてしまうんだ。
「いいな、マフィン。俺甘いの好きだよ」
ハッとした。
あたしはまた悲観的になっていたのか。
「…それってまさか、作った物を食べたいってこと?」
“まさか”の後に“あたしの”をこっそり隠して聞いてみる。