小さな編集社
記憶
トンネルを抜けたところにそれはあった。 今はたまに旅行者が利用するくらいで普段はほとんど使われてはいない。 それが設置されたのは戦後の苦渋にみちた時代を通り抜けて、世の中が落ち着きをもどしつつある時に現れた。徐々にマスメディアにより人々の心の中に少しづつ余裕がでてきだし、家族、友達、仕事場でも会話が増えるようになった。戦前は言葉にも規制があり罰せられた時代であったから。 そしてそれも通信の手段として頻繁に使われるようになってきていた。しばらくは、公共施設や会社ぐらいにしかなかった。この物語の主人公のそれもボックスとして登場する。