花がつなぐもの
和也は花束を作っていた。

和也は、何を思い、何を考え花束を作っているのだろう。

「男性用だろう、
やっぱ、シンプルに
豪華なのがいいかな。」

白、黄色、青色のさわやかな色あいだった。

きっと、男性が手にしても恥ずかしくないようなものを選んだのだろう。

男性が花束をもらう時って、退職の時が多いようだ。

帰りの道のりを花束を抱えて家まで行く。

男性にしてみては、プレゼント用でもない花束を持って歩く事は恥ずかしいらしい。

ましてや、退職ともなるとおじさんの年齢が多いからだった。

「これなら、
持っていても
おかしくないだろ。」

和也はぽつりと言った。

和也も同じ思いで、花束を作っていたようだった。

そんな和也を見ながら、私はラッピングしていた。

女性用だから、可愛らしく仕上げた。

自分がもらっても嬉しいと思えるアレンジだった。

「美咲ちゃん、
可愛いじゃない。」

「本当ね。」

真由さんと、パートの江口さんが、私のラッピングを見て声をかけてきた。

パートの江口さんは、誰よりもこの支店の事を知っている、社員も一目おく存在だった。

年齢は40歳くらいかな。

社員の話があっても、パートでいますと断り続ける人だった。
私は温かい江口さんが大好きだった。

お母さんみたいな存在だった。

「こんなのあったら
可愛いかなって。」

それを聞いて、店長も覗きに来た。

「どれどれ、
お、可愛いね。」

店長も褒めてくれた。

店長に褒められてとても嬉しかった。

『やったね。
褒められちゃった♪』

誰に褒められるよりも、一番嬉しかった。

それって、宝物だった。

何よりもの言葉。

好きな人からの言葉。

本当はもっと他の言葉も欲しかった。

贅沢だよね。

それは分っている。

『頑張って
考えてきた甲斐が
あったってものね。』

「そろそろ、
配達に行こうか。」

和也が声をかけてきた。

そんなご機嫌の中で、和也と配達に出掛けた。



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