甘いクスリ
最後に
愛のあるセックスをしたのは
いつだっただろう。
あれは、マリと
別れ話をした後。
なかなか『別れよう』とも
『結婚しよう』とも
いいだせない俺に代わって
カノジョがいったんだ。
『いいよ。晴紀
私が言ってあげるよ。』
って。
まだ、特にこれといった
功績や実力があるわけのない
時分の頃だった。
メディア絡みの
仕事が舞い込んで、
東京との頻繁な往来が
求められた。
元より、人が帰宅する頃から
営業開始になりがちな仕事かつ
サラリーマン感覚で、
ガチに講座を抱えていた俺は
カノジョとの時間を
うまく作れずにいた。
そんな中、更にすれ違う事は、
目に見えていて。
暗に、一緒にいるために
結婚に逃げ込もうとして
延々と、説明の言葉を
告げていた俺を
その言葉を以って
カノジョが止めた。
『え・・・?』
まさに、今までより
もっと会えなくなるって
話の最中で止められて。
カノジョが発した言葉は。
『晴紀、距離をとろう?
私ね、大好きだから、
晴紀が私に振り回されてるの、
見るの嫌なんだ。』
『距離って・・・何・・?』
カノジョは俯き、
涙をポロポロ零したながら
ひたすら、言葉を吐き出すため
呼吸を整えていた。
『晴紀、
私・・・
もう、会わない。』