甘いクスリ
 

『・・・ちょっと待って。

冷静になるから。』

そういって、その言葉と
カノジョの気持ちを
理解しようとしたけど
うまく出来なかった。


はっきりしたことは

カノジョが自身で、
道を選んだ事と、
自分は、悪者にも
なってやれない
ふがいない男だって事と。


その後、サイゴにって
セックスしてみたけど


二人とも
涙でボロボロになって
何にもならなかった。


俺は非力で 
卑怯な男だ。


カノジョから
ずっと望まれていたのに。


『別れる時は、

結論を出すときは、

晴紀から言ってね。』

って。



カノジョの
たったひとつの願いも
叶えてやれなかった。


そうやって
関係を絶って
十年近く経つ。



マリが、結婚したって
聞いたのはーーーーー

そのあと、半年ほど
経った頃だった。


呆然とした。

……なんで?……とか
……いつ、決まったのか、とか


聞きたいことは一杯あったけど

彼女に別れを決意させたのは
紛れもない自分の不甲斐なさで

いろんな感情は
飲み込んでしまう他
やりようがなかった。


・・・すっかり、ズルイ
大人になりきってしまった


それなのに

マリのズルさや、
当時の考えや、気持ちなんかを
いまですら、受け止めてすら
やれないなんて。



俺は、どうしようもなく
冷たいーーーーーー 





 
< 103 / 212 >

この作品をシェア

pagetop