甘いクスリ
誰ですかと、尋ねようとして
躊躇する。
鍵の開錠の音がする位だ。
まさしく俺の方が
『誰?!』だよな
言葉を探していたら、
相手が、ガバッと振り返った。
「おはよん堂野先生。
なんか、楽しい状況に
発展してんぢゃん」
ショップ袋に
ワンピースを入れながら、
人の悪い笑みを向けてくる
コイツは。
「七海・・・」
エライ奴に見つかった。
「なになに?
結局、付き合ってんの?
先生と琴子さん。」
「いや・・・特にわ・・・」
「何よ?じゃあ、
大人の関係って奴?」
納得のいかない顔して
七海はいう。
「・・・」
肯定も否定もできない。
けど・・・
「先生、コーヒー飲も?
七海、いれてあげる。」
突然、七海がニンマリ笑って
言った。
これは
洗いざらい、吐かされる。
「大丈夫だって。
七海、コーヒーだけは
上手にいれるねって、
褒められるんだから」
姉貴と同じ臭いにビビる俺の
心配とは、全く掛け離れた
『大丈夫』を、七海は説いて。
とりあえず、寝ぼけたまま
頷いた。