甘いクスリ
 

『え何?!どこか痛む?
病院行こうか?!』

私の涙に焦ったのだろう彼女は
うろたえた風に、そう言う。

『・・・大丈夫です。
ありがとうございます。』


俯いたまま、何とか
お礼をいえば


『あ・・・?
コトコ、ちゃん、だよね?

送ってあげるよ。』


彼女は、そう言って
私の涙を指で拭った。



正直、駅から会社までは、
すごく近くて、
わざわざ、車に乗せてもらう
距離ではない。

でも、大打撃を受けた足腰には
とても有り難いお心づかいで


昨日の先生と彼女の会話を
聞いていれば、二人とも、
それなりに相手に未練とか
あるはずなのに

厚意に甘えるイコール、
敵に弱みをみせると同様だけど
うまい断り文句も
おもいつかなくて


のこのこと、
ついていってしまった


 
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