甘いクスリ
『昨日、晴紀に、
ああいったのは、本心よ。
でも、私じゃ、ないんだよ。
晴紀の隣にいる相手は。
それが解っているから、
コトコちゃんには悪いけど
気持ちを整理したかったの。
ごめんね。
コトコちゃん・・・』
彼女は、淋しそうに笑った。
しんみりした空気と
適当な時間である事を
確かめたマリさんは
車のキーをとりだす。
『マスター、彼女、
送ってくるわね。
戻ってきたら、私も飲むから。』
彼女は、言って、
サロンエプロンをはずす。
『ああ。おまえの後始末なら
ゲロから骨上げまで
引き受けてやる。』
マスターが、男前に笑って
物凄い台詞を吐いた。
ゲっ・・・ゲロって・・・
まさか、その詞が
プロポーズとなって、
二人が結婚する事になるとか
そんな結末は
今の私たちには
知るよしも、ない。