甘いクスリ
 

出会って間無しに
俺の実力を
正当に判断していた彼女に、
認められたい。


音楽に携わる人間としても
一人の男としても。

 
いつか、自分の未来を
託せる相手だと
認められたいと思ってる。


それには、このチャンスは
逃せないんだ。


そんな思いを抱きながら
弾き終えた、自分の
ソロパートのアドリブ。

パタッと、鷹尾君の音が
止まった。


「え?」

何で?
思わず、奴の表情をみる。

「すげ…いいっすね。今の。

なんか、いつもの堂野さんと
違うかも・・・。

いや。ブルース、十八番なのは
知ってるけど・・・

ダメだな、俺のじゃ、弱いな。
練りなおさねぇーと。」

・・・褒められた・・・


「キャー。先生、カッコイー
もう一回聞きたーい」


食事の支度を終えて
俺達を呼びにきた真月まで
目を輝かせるから
柄にもなく照れてしまって。


「だから、堂野先生・・・
お顔、真っ赤ですから・・・」

いつも、鷹尾君に向けられる
定番の台詞が、
俺に向けられた。


 
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