甘いクスリ
最後のリハを終えて
迎える当日。
最後のリハーサルも
渾身のアドリブは
人生初というほど
周りに褒められた。
いや、俺だってれっきとした
ギター講師な訳で
当然、ある程度の経験も
技術も備わってるはずで。
周りに褒められるとか・・・
本来なら、嘗めんな位の
一言を言うべきなんだけど。
『先生、カッコイイよ』
『堂野君、いいメロディだね。
あのコード感とか、さすが。』
等など、褒められれば
悪い気分など、
おこるはずもない。
イベント当日、
初参加の都築を気にしながらも
俺には、俺の仕事があって
ギターを担ぎ、ライブハウスに
乗り込む。
楽屋に楽器を置きにいけば
里奈がせっせと衣装を
ハンガーにかけていて。
「おはよっす。あ里奈、
それ、今回の衣装?」
「そうよぉ。」
鼻歌まじりの里奈。
奥で缶コーヒーを
つまんなそうにくわえる鷹尾君
「里奈、オマエとめろよなあ
毎回毎回、あいつらは」
「ああ、レンと真月か?」
彼女達の衣装は、毎度
話題を呼ぶ。
真月は、元々セクシーな
モノを選ぶ傾向があるのだが
二人が揃うと、結構な迫力で
鷹尾は、気に入らないのだろう