甘いクスリ

 
出番が間近になってきて
そろそろ衣装に着替えようと
移動をはじめた時だった。


「あ、都築さん、
調度よかった。」

トイレの前で鷹尾先生に
バッタリ出くわす。

若干、切羽づまった表情を
している。

「どうかしたんですか?」

何とも言えない表情に
問い掛ければ、

「ゴメン、真月が
出てこないんだ。

アイツ、ここんとこ
具合良くないみたいでね。

様子、みてもらっていい?」

流石に、女子トイレに
乗り込むなんて、先生には
出来ないのだろう。


了承して、トイレを覗けば
一室だけ閉じた扉の
個室の奥から聞こえる
押し殺したうめき声。



ーーーーえ?


ーーーー真月さん?



嘔吐にも聞こえる


「真月さんですよねっ?!
大丈夫ですかっ?!」

思わず扉をノックしながら
声をかければ。

「大丈夫。食べ過ぎただけ。」

そんな返事が聞こえる。


嘘だ。

何も食べてなかったじゃない。

レンさんと二人、
何にも食べてなかったじゃない

私と七海ちゃんが
しっかりめのランチをする間。

 
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