甘いクスリ
バタバタした雰囲気で
私の緊張は、何とか和らぎ、
そして、ステージへ。
透さんの発言や
堂野さんの言った通り
私は
失敗とまでは言わずとも
舞い上がってしまって
何をやったか、全くの
うろ覚えだった。
「都築、あんだけできりゃあ、
十分だよ。
次の曲は、楽しくやろうな。」
そう言って、先生が、
お団子にまとめた髪を
クシャクシャっとする。
「くあ〜っ緊張した」
お色直しをした真月さんが
胃をさすりながら
ソデのたまり場に加わる。
そんな様子は、微塵も
感じさせなかった。
ボーカル科の先生との
掛け合いは絶品だった。
リハでみた、レンさんとの
掛け合いも恰好ヨカッタけど
曲調的には、こっちのが好き。
「わー素敵。」
彼女の衣装の艶やかさに
思わず感嘆の声をあげる。
「お真月、おいらんか?!」
「おうよっ。
ありんす、ありんす」
何か‥‥
使い方が間違ってる
気がするんだけど‥‥
まあ、いいか・・・
そして、また、
堂野さん嬉しそうな事
薄い紫のオーガンジーの
グラデーションに、
刺繍の入った和装な装い。
さっきのワンピースの上から
羽織っている。
当然、衿は、これでもかっ?!
って程、ぬいておられる
そして、手には、
今朝、レンさんから
預かっていた彼女の衣装
こちらも紫のオーガンジー。
レンさんは、サリー風に
重ね着するらしく、
六メートル近くある布で
真月さんの腕の中はモコモコだ。