甘いクスリ
「先生?楽器、運んでもらって
すいませんでした。」
彼女の言葉にハッとする。
「あっ?!ああ。」
すっかり見とれていた。
琴子の伸ばした手に
ギターを渡す。
「最後の曲だからさ、
思いきって、楽しもうな。」
コクリと頷いた彼女は、
人数が相当に増えた舞台で
さすがに緊張が和らいだの
だろうか?
先程より、ずいぶん
柔らかい表情をしていた。
しかし、実際、一番厳しいのは
これからだったりする。
十名近くのギタリストが
ソロパートアレンジを
リレーするんだ。
これは、もう、品評会ヨロシク
好きなだけ比較してくれと
ゆっているようなモノだ。
間違いなく、好き放題に
批評される。
だからこそ、燃えるし
イイトコ見せたい訳だけどね。
早く始めたい。
うずうずする。
ギターを抱きしめ
高ぶる気持ちを押さえる。