甘いクスリ

 
超冷静を保ってる俺って、
今日ばかりは、スゲェーかも。


エンディングに繋がる
フレーズを丁寧に弾く。


鷹尾君がすぐにのっかってきて
続いて狩野さんと
新入り(講師)君のユニゾン

更に生徒達が音を重ねていって
想像以上の反響の中で
その一曲は終わっていった。




いつまで経っても
なりやまない拍手と
アンコール

こんなの、いままで、
このイベントでもなかったはず。

アンコールには流石に
応えらんなくて残念だけど。

そんな感慨に、それぞれが
浸っているであろう
このスバラシキ瞬間に
貴奴は、思いつくんだ・・・

「師匠!ヅカみたいに
皆で手つなぐ奴、やろうよぉ
七海、調度、羽根生えてるし」

ほれって、羽根を揺する
超自分軸な七海。

オマエは、ホント、
俺みたいだな。

「おおっ、いいねぇ
なかなか、ナイス
じゃ、そういう事で。」

狩野さんの、イマイチ
強制力にかける号令で、
各々楽器をスタンドに立て
舞台中央に集まる。

適当に立って隣の人間の手を
とろうとした時、
小さな悲鳴が聞こえた。

「あぶなっ・・・」

鷹尾の声に、パッと
後ろに視線をやれば
シールドに、ドレスを引っ掛け
転びかけた琴子がいて。

「うあーっ」

思わず、支えようと腕を
伸ばしたけど、間に合わない。

ヤバい・・・
 
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