甘いクスリ
「た・・・」
「おまえ、も少し寄ってみな。」
『鷹尾君』と言いかけた声に
叫んでもいないのに
とおりのよい声が被さる。
・・・聞き覚えのある
・・・できる事ならば
ここでは、聞きたくない
その声。
「わあ千香子さん!
来てくれたの?!」
琴子の嬉しそうな声と。
「ひさしぶりだな。
琴子ちゃん。約束通り
聴きにきた。よかったよ。
ほら、晴紀さっさとしろよ。」
琴子に近づこうと、動き回る
和紀を男前に小脇に抱え
デジカメのレンズを
こちらにむける。
周りには気づかれてないものの
横でこのやり取りに、
呆気に取られていた鷹尾君達が
ニタ〜っと、口元を緩めた。
ちくしょーっ
真月は、取り合えずとしても。
鷹尾君に、この光景を
見られるとは・・・
日頃の行いが脳裏をかすめ
プチパニックに陥る俺をよそに
「おー。隣のおいらん達も
おはいり。」
姉貴のマイペースは続く。
「あいいっすか?
じゃ、遠慮なく
ほら、樹里、いくよ?」
真月が、戸惑い気味の
鷹尾の手を強引に引き
俺との間を詰める。
そして、アイツは
『ハイチーズ』とかなんとか
ありがちな掛け声もなく
己のペースでさっさと
シャッターを押して。
男前に、じゃーな、等と
片手をあげて、
サッサと撤収したのだった。
後に残された
俺の身になってくれよっ
姉貴のバカーッ