甘いクスリ
その頃の琴子は、
俺の事なんて、見てなかった。
・・・鷹尾君を
見てたんだから・・・。
嫉妬心だか、なんだか
訳のわからない感情が
心を巣くう。
でも、それは、琴子だって
一緒な訳で。
いまでこそ、とりあえず
最初の頃は、真月に宛てのない
ヤキモチを相当妬いていた。
(きっちり、返り討ちに
あっていたが。)
マリとの事だって、
色々、考えたハズなんだ。
だから、過去より
未来をみる。
つまんない感情は捨てる。
「この子、美人だよね。」
琴子は、うっとりした様に
ボディを軽くノックする。
コツコツと乾いた音が
遠慮がちに聞こえて。
「弾いてもいいよ。
躾が行き届いてるから、
従順だよ。」
簡単にいえば
癖のない音をしている。
俺の仕事みたいに。
根底にあるのは
ギターが弾きたいって事だけ。
この仕事を続けられるのも
相当運がいいって感じだ。
そんな思いに耽っていれば
「いや、いいよ
だって、私が弾いても
先生みたいな音にならない
だろうし。
もっとうまくなったらにする。」
・・・ちょっとは、
リスペクトしてくれているの
だろうか・・・?