甘いクスリ
「なあ、鷹尾君、わかってると
思うんだけど・・・
職場には・・・」
気まずそうな、堂野さん。
千香子さんから、聞いていた
教員規約を思い出す。
そうだ・・・
付き合ってるって、バレちゃ
まずいんだった。
「ああ、黙ってますよ。
うちに続いて‥‥じゃあね。」
そういって、鷹尾先生が
苦笑した。
「でも、心配しなくても、
大丈夫じゃないかな。
俺も契約期間、残り少ないし。」
そんな簡単に気づかれない
でしょ?って、先生はいう。
更に、案外欲しいものに対して
鷹尾先生は手段を選ばない人だ。
イベントで七海ちゃん達が
真月さんと演奏したいと
嘆願した時の話を思い出した。
「その気になれば、いくらでも
裏なんてかけますよ」
ニンマリ笑みを浮かべ、
堂野さんに入れ知恵をする。
何てドス黒い
悪魔な笑みなのっ
「彼女、上手いんだから、
個人レッスンに変えるとかね。
そしたら、他人の目も
気にならないし。
堂野さんくらい生徒がいれば
自宅開業もできるだろうし」
・・・この人は
真月さんを落とす為に
きっとこんな対策をイロイロ
考えていたんだろう・・・
かつて、大好きだった人の
思わぬ策士ぶりに
口元がひきつった私だった。