甘いクスリ
『俺が堂野さんだったら、
マジで、自宅開業するけどな。
あんだけ待機生徒いるんだし。』
ある意味、人気商売だ。
文化サロンの講師というのは。
俺は、テクニックよりも
この顔の方が、武器だと
思っていたんだけど・・・
『俺の生徒で、堂野さんや
狩野さんのクラスに
異動してもらった奴らって、
ちゃんと、ギター弾きとして
学びたい何かがある奴らの内を
厳選したんですよ。
基本的には、降任に
引き継ぎましたしね。』
ぢゃなきゃ、隣の部屋に
(↑俺達は、隣り合った教室で
教えている。)
女子が塊で異動しちゃうでしょ
って、鷹尾君はいう。
何せ、理解した事は、
俺は、自分のギターセンスと
いうものを、あと少しは
認めてやってもいいんだ・・・
って、事だった。
「堂野さん?」
さっきの鷹尾君との会話を、
頭の中で繰り返し考える俺を
彼女が呼ぶ。
「あっはいっ?ごめん」
いっぱい呼んだ?って
聞いた俺を見て、彼女は微笑み
「いえそんな。
五回くらい呼んでみただけで」
なんて答える。
・・・割と、
呼んでくれていた
らしい。