甘いクスリ
「・・・先生。
あ、間違った。
どっ・・堂野さん・・・」
「なに?」
赤い顔した都筑を
見て苦笑する。
「すげー。都筑、真っ赤。」
鷹尾君みたい。
今日は、一日偽彼女な都筑
さすがに、先生はまずいので
苗字で読んでいる。
設定では、二ヶ月前に
知り合ったということで、
ほぼ現実と誤差がない状態。
現実どおり、
俺のクラスの生徒として
知り合ったって事にした。
真っ赤な嘘は
結婚を考えるような
間柄って所だけ。
「まだ、ですか・・・?」
春先の寒さの残るこの時期、
塀越しに咲いた桜が
風で舞い散る。
一応、近所の目も意識して、
仲の良さを手をつないで
アピールしてみたりする。
「手、繋ぐのいや?」
「違いますっ
この垣根って、先生の・・
堂野さんのお家の塀でしょ?
どんだけ大きいんですか
・・・。」
「家は大きいけど。
俺の資産じゃないもの。
親は資産家だったけど、
姉貴が面倒な事と一緒に
引き受けてくれてるよ。」
俺なんて、金持ちとか、
旧家の器じゃないもん。
「先生、ほんとに私でいいの?
・・・どこの馬の骨か
わかんない人ですよ?」
いまさら、でしょ?
都筑さん・・・