甘いクスリ
「わああっ。ステキ」
更衣の間に、乱入しようとする
甥を抱き上げ、退散しようと
したとき、襖の奥から、
都筑の嬉しそうな声が
聞こえた。
振り返れば、タイミングよく、
襖が開き、都筑がパタパタと
小走りに出て来た。
黒地に紅梅色の花びらの柄を
あしらった着物。
母親が、生前、気に入って
大事にしていた物だ。
「先生、見てっ
着物きせてもらった!!」
本当に、うれしそう。
すっきり着こなしてる。
「よく、にあってるよ。」
頭をポンポンと撫でると
何ともいえない
笑顔をみせてくれる。
可愛いな・・・コイツ
って、ダメだっつうの。
思わず
抱きかけた気持ちに
気付かない振りをした。
俺は
サラリーマンなんだから。
他の講師みたいな訳に
いかないんだから・・・