甘いクスリ
 

近くのコインパーキングまで
来たところで、
都築と繋いでいた手を離す。

「さっき、姉貴と
何の話してたの?」

「ああ、台所でですか?」

事と次第に寄っちゃ、
早期に傾向と対策を打たねば。

そう、思っていた。

が、

「千香子さん、全部、
気付いてましたよ?」

「はっ?」

都築は困ったように
苦笑した。

ちなみに、千香子は
男前の姉貴の名前だ。

「晴紀が生徒に
手を出す訳ないんだって。
そうできない理由が
あるからね。って。」

・・・姉貴
ちゃんと、
分かってくれてるんだと、
不覚にも、目頭が熱くなる。

「だけど、面白いから
どう落し前つけるか
御手並み拝見だそうです。

『その時は、
わかってんだろうな?』
ってのが、千香子さんからの
伝言です。」


・・・あんのババァ・・・


ハードルあげやがって。


「・・さいですか・・・」

人を騙すって
案外体力がいる。

疲れすぎて、車を転がしながら
頭が麻痺してしまっていた。
 




< 49 / 212 >

この作品をシェア

pagetop