甘いクスリ
コマーシャルにさしかかり、
BGMとともに、
恥ずかしげに手を繋ぐ、
学生カップルの映像に
意識がいく。
桜の木の下で、切なげな
マイナーコードと共に
網膜に焼き付くそれは
日中の、自分と・・・
都築に手を差し延べた
自分と被った。
帰りがけ
何で、アイツは
手を繋いだんだろう。
俺が差し出した手を
とったんだろう。
姉貴にバレてるって
あの時、言っても
よかったのに・・・
あの時点で
都築は知っていた。
それどころか
もう少し前の
あの言葉だって・・・
必要だったのか?
『ええ。でも、
私は、堂野さん、
好きですから。』
あの言葉は
なんなんだよ・・・
心臓のリズムが
乱れた。
もう、十年以上も前に
忘れてしまっていた感覚が
呼び覚まされそうになる。
でも、もう、どうやって
ソレをしてたかも
正直、覚えてない。