甘いクスリ
 
 

仕方なく、都築の
部屋へ引き返す。

足取りは重くて
疲労が増した。


「あっ。おかえりなさい。」

エントランスで
俺を探していたのか
キョロキョロしていた都築が
微笑んだ。

手に、俺の財布を持っている
ところをみれば、
追ってきてくれたんだろうか。

まだ息が整わず、
絶え絶えな息のままの俺に、
もう遅いし、ここじゃあ
何だからと促され、
部屋に入った。


「追いかけようとしたら、
千香子さんから電話が
あったんです。」 

すっかり、開き直って
アルコールをあおる。

本気で走っただけに
かなり、ウマイ。

「それで嬉々として、
アイツは電話してきたわけか。」

「すいません
元はといえば、私が、
ストラップの調整まで、
頼んじゃったからですよね。」

その為に、コインを出して
財布を置きざって
今にいたる。

独身のツレなんて
さすがにもう望めない俺は
自力で、この夜を
乗り越えるしかない。

恥をしのんで
言葉をはきだす。

「都築・・・あのさぁ。
二択してくれ。
タクシー代、かしてくれるか
泊めてくれるか、
どっちか選んで(ーー;)」

自力で帰れない
マヌケな俺。


 

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