甘いクスリ
身体が満足に動くうちは
ギターで食ってきたい。
・・・じゃあ
考える事なんて
なんもねーじゃん。
『生徒さん』と
恋愛なんて
論外でしょうが。
「先生、知ってる?」
「何が?」
突然、真月が切り出した。
コイツは、大概
唐突に話し出す。
「あたし、樹里と、結婚できて
よかったって、いつも思うの。」
そりゃ、よかったな・・・
くっつけたかいがあったよ。
「先生、あたしと樹里は、
どっちにしても、
こうなってたよ?
先生のトラップがなくても。」
「あのねぇ。真月。
一応、規約ってモノが、
あるんだから、勝手な事
できないでしょ。」
「そうなの?
先生、あたし、ほしいものは
どんな努力しても
全部手に入れるわよ。
一度きりの人生なんだもん。
遠慮なんかしない。
破られたくない法規なら
罰則はキビシイでしょ?
破られるような半端な規則
巻いてるほうが
甘いと思うけど?」
子供には
聞かせられない
明らかな、真月主義。
でも、
真っ直ぐ見つめてくる真月に、
ご都合主義でありつつも、
得体のしれないパワーを
もらった気がした。
「渡辺さん、
携帯鳴ってるよ。」
「あ。サンキュー。
誰から?かかってる?」
テーブル席から呼ばれ
彼女は席を立つ。
「ん?悪徳弁護士って
表示でてるよお〜。」
「ああ、透だ。」
・・・うまいこと言うな
真月は、さっさと
電話をもって
店の外に姿を消した。