甘いクスリ
「何か勉強になるような
テクなんかの話した?」
狩野派の飲み会に、
参加しそびれる羽目になった為
情報収集も兼ね、
透の行動をチェックする。
奴は、俺に足りない物を、
ほぼ全て持っている訳で、
まさか、ここで透に
都築を持ってかれる訳に
いかないし。
しかも、奴は俺とタイプが
被ってる。
つまりは、鷹尾の様に、
おもちゃにされる可能性も
極めて高く、要注意な訳だ。
「特に何も。
でも、褒めてもらいましたよ」
「ああ、ギター?」
「・・・七海ちゃんの取扱。」
・・・なるほどな
あの狩野師匠を以っても
七海のマイペースには
振り回されてる訳だ。
「七海なあ。
黙ってギター弾いてりゃ
かわいいんだけどなあ。」
そういや、なんか
取引しようとか
いってたな。
なんだっけ?
くだらない話だった
記憶しかないし。
ま、いいか。
ひとり、回想に耽っていれば
「やっぱり、先生も
七海ちゃんの事、
かわいいと思う?」
何とも言えず、
にこやかな表情で
クルッと上半身を向けて
都築は問う。
「かわいいっても、あれだぞ?
何かこう未知の生物を
見てるみたいっつうかさ。」
タバコの火を、灰皿に
押し付けながら、そういえば、
都築はキョトンとした表情で、
俺をみた。