甘いクスリ
 

「先生、話、聞いてる?」


「んあっ?」

・・・完全にトリップしてた


都築の見上げる仕種が
中々に、かわいくて。

また、違うところに
意識が行ってしまう。

「ああっと・・何だっけ?」

つくり笑いで、ごまかした。


「上がんないの?」

泣き笑いみたいな表情で
鼻づまりチックな声で
聞いてくる。

「あ、うん。
・・お邪魔します。」

ギターケースを持ち、
ダイニングの方へ進めば、
彼女は慌てた風に
引き戸を閉めた。

「?」

「すいません
ちょっと片付けるんで、
こっちの部屋で
待っててください」

言って、強引に
寝室に押し込まれた。


「えっ?!都築?!」



都築よ・・・

これは
いかんだろう。


めっさ、ベッドが
幅を利かせてるし、だな。
俺だって、オトコなんだし。


こんな無防備に・・・


「別に散らかってても
平気だけど?ってか、
散らかってたこと
ないじゃん?」
 
こないだも突然きたけど。


「いえ、そうではなく。
片付けないと
いけないものが。」

首だけ振り返り
あははは……と、
乾いた笑い声をあげた都築を
腕に抱きとる様に動きを拘束し
ダイニングのドアを開けた。


「・・・」
「・・・」


 


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