観覧車大作戦【短編】
プロローグ
壁に背中を預け、彼女を待っていた。
ここは、若者向けのショッピングモールの中だ。
クリスマス・イブということもあって、たくさんのカップルが僕の前を横切っていく。
今日のここまでのデートプランは、すべて僕が考えた。
といってもラブストーリーの映画を観て、有名なレストランで食事をするという芸のないものだ。
そのデートもいよいよ大詰めだ。
これから行うことの結果いかんでは、最後のデートになるかもしれない。
本当にうまくいくだろうか?
計画通りにいくだろうか?
不安がよぎる。
それに、たとえうまくいったとしても――。
「お待たせ」
頭の中がまとまらないうちに、彼女が化粧室から出て来た。
「ねえ、健二。
観覧車に乗る前にコーヒーでも飲まない?」
今夜は、ここのビルと一体型の観覧車に乗る予定なのだ。
その真っ赤な大観覧車は、街のランドマークにもなっている。
彼女は愛らしく首を傾けて僕を見つめた。
長いまつ毛が、大きな瞳をさらに際立たせている。
丈(たけ)の短いスカートは十二月の夜風には冷えたかもしれない。
「そうだね。七階にカフェがあったからそこに行こうか?」
「うん。じゃあ、行こ」
彼女は僕のコートのそでをつまんで、歩き出した。
長い黒髪が、僕の目の前でふわりと舞った。
そのまま、シャンプーのCMに出ても、あでやかに映るだろう。
彼女はきれいだ。
やはり彼女は、僕にとって高嶺(たかね)の花なのかもしれない。
僕は覚悟を決めた。
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