観覧車大作戦【短編】
「そういうことになりますが、よろしいですか?」
美穂は申し訳なさそうに私たちに聞いてきた。
「うーん、どうしよっか?」
健二が意見を求めてきた。
「うん……」
もちろん、あいのりなんてごめんだ。
けれど、健二はシャイな男だ。
ここまでのデートも、どこかぎこちなかった。
ラブストーリーの映画を見ていても、手を握ろうとすらしてこない。
そんな健二が、勇気を出して告白を決意したのだ。
今日のデートも練りに練ったプランであったに違いない。
ラブストーリーの映画を観て、雑誌に載っていそうなオシャレなレストランでディナー。
そしてクライマックスの観覧車の中で、愛の告白。
まるで教科書に書いてありそうなデートプランだ。
それでも健二にとって、悩みに悩みぬいて練ったプランであるに違いない。
恋はタイミングが命だ。
このタイミングを逃せば、健二は意気消沈して、二度と告白しようと思わなくなるかもしれない。
私たちとあいのりになるのは、年頃のカップルだ。
多分二人の世界に入ってしまうだろう。
私や健二のことなど気にもとめないはず。
あるいは逆に、彼らのいちゃつきぶりを見て、健二もその気になるかもしれない。