観覧車大作戦【短編】
「あのさ、やっぱり今日はやめにしない?」
後ろで透の声が聞こえた。
やっぱり透も、あいのりは気まずいのだろう。
好都合だ。
このまま、透たちが引き返してくれれば万事うまくいく。
「どうして? せっかく乗れるのに」
連れの女は反対する。
余計なことを。
「もっとすいてるときに来ればいいじゃん」
がんばれ、透。
その応援がなんとも滑稽(こっけい)に思えたけれど、この際どうだっていい。
今は、あいのりを回避することが最優先事項だ。
「いつも混んでるわよ、ここ」
連れの女はまだ抵抗する。
加勢できないのがもどかしい。
「平日に来ればすいてるって」
透もなかなか粘ってくれるじゃないの。
「何言ってんの。
私には仕事があるのよ?
学生のあんたとは違うの」
この女も、どうして今夜にこだわるのだろう?
人のことは言えないけど。
「それとも何?」
しぶっている透に、女は上目遣いを向けた。
「ひょっとして、乗りたくない理由でもあるのかしら?」
女はニヤリとして言った。