観覧車大作戦【短編】
健二に告白させるための作戦はたててある。
あとは、その作戦通りにことを運べばいいだけだ。
頂上が勝負どきだと私は考えていた。
なぜなら、ゴンドラが高く上っていくにつれて、人の気持ちも高揚していくからである。
これは私が見出した理論だ。
あながち外れていないはず。
いわゆる「吊り橋効果」の応用だ。
グラグラと揺れる吊り橋の上でのドキドキ感は、恋愛のそれと錯覚しやすいというあれである。
この吊り橋を観覧車に置き換えてみる。
まず、高所にいるという恐怖感を、恋愛感情と錯覚してしまう。
そもそも高い場所というのは、ときめきを感じる場所なのだ。
だから、カップルたちは夜景の見える展望台だとかによく行くのだ。
観覧車の場合、その高さにさらに二つの要素がプラスされる。
一つは密室であること。
誰にも邪魔されない密室の空間が出来上がるのだ。
嫌でもいい雰囲気になるはず。
今は例外だが。
そしてもう一つ。
吊り橋と違って、観覧車は徐々に高度が高くなっていく。
高度が高くなるにつれて、恋愛感情も高まっていくのだ。
そして、その恋愛感情のメーターがマックスになったとき――そのときこそが、ゴンドラが頂上に到達したときなのだ。
私はそれを勝手に「観覧車効果」と名づけた。