観覧車大作戦【短編】
あと三分足らずで頂上に着いてしまう。
そろそろ仕掛けなければ。
例の作戦を決行するしかない。
作戦その一、『手をギュッと!』。
作戦といってもなんてことはない。
ただ、健二の手を握るだけのことだ。
子供じみた手だが、これが案外効果的なのだ。
特に、健二のような純情な男には絶大な効果が期待できるはず。
隣の健二の左手に目をやった。
手は、太ももにのせている。
握りやすい位置だ。
チャンスだ。
いざ、手を握るとなると、なんだかんだでドキドキする。
手のひらが汗ばんできた。
らしくない。
……。
ダメだ。
できない。
少女漫画の主人公になりきっているからではない。
透の前でそんなことできない。
私の葛藤(かっとう)などつゆ知らず、不意に健二はとんでもないことを口にした。
「千佳ちゃん、ひと月前まで誰かと付き合ってたんだよね?」