観覧車大作戦【短編】
「ええ。そうよ。付き合ってたわ。
もう一ヶ月になるのね」
平然と答えてみせた。
ついでに、一ヶ月が長い期間であることも印象付ける。
「その彼のこと、まだ気になるの?」
やっぱりだ。
健二は、私がまだ、前の男を引きずっていると思っている。
「全然」
そのことばは、きっぱりと言うことができた。
けれど……
「あんな男のことなんて……」
自然と透に目がいく。
また、目が合った。
すると、ことばが続かない。
「どうしたの?」
健二は優しく聞いてくる。
私はうつむいて言った。
「もう吹っ切れてるわよ……。
彼のことなんて……」
明らかに迷いをにじませた口調だった。
これじゃ、引きずってると言っているようなものだ。
それよりも、これを聞いた透がどんな表情をしているのか気になった。
けれど、顔を上げる勇気はなかった。